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  • 「まほろ駅前多田便利軒」の魅力
    「まほろ駅前多田便利軒」の魅力

    三浦しをんさんが書かれた「まほろ駅前多田便利軒」は、ドラマ化や映画化もされた人気作品です。便利屋を営む主人公とそこに転がり込んできたかつての同級生との、平凡なようで波乱万丈な日々の生活を描いた物語になっています。ここではこの本の魅力について少し紹介したいと思います。

    人間味あふれる登場人物

    主人公である多田啓介は、あるきっかけで安定した生活を捨て便利屋を始めました。そこにやってきたのが、高校時代の同級生である行天春彦です。行天は勝手に多田の家に居座り、気が向けば多田の仕事を手伝うという自由奔放ぶりを発揮しますが、多田は口では「邪魔だ、出て行け」と言っても本気で彼を追い出そうとはしません。主人公である多田は人間関係に淡泊で冷たいような印象を受けますが、本当は行くあてのない行天を放っておけないのです。そして行天もまた、掴みどころのない飄々とした性格である一方、文章の端々で繊細で他人の気持ちを慮る優しさを持っていることが伝わってきます。2人とも人間が好きで人並み以上の優しさを持っているのですが、それを素直に表現できないところに彼らの魅力があるのだと思います。また、話はこの2人を中心に展開していくのですが、彼ら以外にも魅力的なキャラクターがたくさん出てきます。犬と子供が大好きな明るい娼婦、規則正しい生活を送る真面目なヤクザ、生意気だがどこか憎めない小学生、呆けているはずがたまに預言めいたことを言う老人など、ひとくせもふたくせもある登場人物がこの話を盛り上げていきます。

    痛快で心温まるストーリー

    便利屋のもとには様々な依頼が舞い込んできます。ペット預かりや、塾の送迎、納屋の整理など、依頼自体は単純なはずが、多田と行天の手にかかればなぜか厄介な方向へと進んでいきます。彼らはそれぞれ暗い過去を持ち、だからこそ誰かとつながることに臆病になっているようです。しかしながら、お節介な彼らは困っている人を切り捨てることもできません。2人はどんどん面倒になっていく依頼に自ら首を突っ込み、苦労し、傷つきながら、しかし、そこでかけがえのない何かを得ていきます。そして、彼らは自分の奥底に眠る過去と向き合い始めます。

    人生に疲れた時こそ読みたい作品

    私がこの本と出会ったのは5年前のことです。それから今までに何度も読み返してきましたが、読めば読むほどに新しい気づきがありました。自分の成長に伴い、主人公に対して異なる角度で共感するようになりました。そして、生きていくことが嫌になった時に、この本は私に人間の温かさと優しさを思い出させてくれました。多田と行天、2人を通して読者自身も成長できる作品です。皆さんもぜひ、人生に疲れた時こそこの本を手に取ってみてください。