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  • 『イギリス国民の誕生』を読んでみた感想
    『イギリス国民の誕生』を読んでみた感想

    昨年、世界を驚かせた「イギリスのEU離脱」。なぜイギリスはヨーロッパ大陸との繋がりを自ら断とうとしたのか、イギリスのナショナリズムとは何なのか。そんな時に見つけたのがこの本でした。出版年を見ると「2001年」。15年前に書かれた本著が、その謎を解いてくれるのではないかと思い、読んでみました。

    感想その1~キッカケは宗教だったのか!~

    著者のリンダ・コリーが、イギリスの国民意識醸成の最大要因としたのが「プロテスタンティズム」でした。私は、ナショナリズムといえば「民族」を根拠に行われる活動のことを指すと思っていました。また、イギリスがそこまで宗教色の強い国だとは思っていなかったので、著者の仮説は驚きでした。具体的には、イギリス国教会の成立と共に、「大陸側にいるカトリック勢力(=フランス)に対する”私たち”」というアイデンティティーが醸成されていったと説明されていました。この主張を読んでから、イギリスのEU離脱のことを考えてみると、「アンチ大陸」であったイギリスにとって、EUにいたことがイレギュラーなのかもしれないと感じました。その点で、筆者の主張は15年経っても古くないのではないかと思いました。

    感想その2~そんなところからも読み取れるのか!~

    イギリスといっても、正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」です。複数の国々がどうやって「一つの国民」という意識を持てたのか。この問いに対しては、著者は意外なところから読み解いていました。一つは「役人の出身地」です。最初は、中央政府の役人の殆どがイングランド出身者でしたが、徐々にスコットランドやウェールズ出身者も増えていきます。その変遷を、役人の出自を調べることで、著者はまとめあげており、その着眼点と調査への執念がすさまじいと感じました。もう一つは「国王のシンボル化」です。イギリスは、国王を政治から切り離し、国民のシンボルとしました。著者はその過程から、イギリスが国民に植え付けようとした「イギリス国民というイメージ」を描こうとしていました。しかし、私は「全てを作り物にはできない」と思いました。国王が本来持っていた気質や性格がその時代にフィットしただけのことなのではないかと感じました。

    本全体の感想

    日本語訳も読みやすく、1章ごとの文量もそこまで多くなかったので、最初に手にとった本がこの本で大正解だったと思います。ただ、全て鵜呑みにするのは危険でもあります。実際に他の本を読んでみると、プロテスタンティズム以外にも多くの要因があります。この本は、イギリスのナショナリズムに関心を持った人が最初に手に取る「入門書」として捉えた方が良いと感じました。