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  • ドラマ『半沢直樹』の原作者である池井戸潤氏の隠れた名作
    ドラマ『半沢直樹』の原作者である池井戸潤氏の隠れた名作

    テレビドラマで大いに巷を賑わせた『半沢直樹』の原作『オレバブシリーズ』や、直木賞を受賞した『下町ロケット』の作者として知られる池井戸潤さん。その彼の隠れた名作『空飛ぶタイヤ』という小説について書かせてもらいます。

    簡単なあらすじ

    空飛ぶタイヤ。タイヤとはいわゆる自転車や自動車についているあのタイヤです。タイヤが空を飛ぶ。ずいぶんと荒唐無稽な作品タイトルのように思えますが、実はこの短いタイトルにはこれでもかというほどの皮肉が込められています。主人公は、中小企業の運送会社を経営している社長。下町ロケットでもそうですが、社長が主人公という小説は珍しいです。その主人公が経営している会社の社員が、貨物運送中にトラックの脱輪事故を起こして死傷者を出してしまいます。容疑者扱いを受けた主人公の社長とその会社は、取引先と世間からの信用を失い、倒産寸前の状態まで追い込まれます。しかし自社の自動車整備には何の問題もないと確信する社長は他の原因を探り、事故を起こしたトラックの販売元、超巨大企業へ戦いを挑むことになります。

    作品の書評

    とても完成度が高い作品です。いわゆる「読みだしたら止まらない」の代表格といえるような。逐一この作品の面白さを羅列していくと収まりきらなくなってしまうので、あえてこの作品の良さを一点に絞るとしたら、「魂の叫び」でしょうか。人の日常にはいろいろな場面があります。いつだって自分の言い分を好きなように言い放てるわけではありません。人間関係やその他の事情で自分を抑え込み、我慢をしながら生きています。そんな日常でも、自分の内側には何かがあるはずです。水溜まりのように、内側に抑え込んでいる情動が一滴一滴溜まっています。その内に溜まったものを、この作品は解き放してくれます。これでもかと自分の本音をぶつけるこの作品の主人公に読者は自分の気持ちを上乗せして物語を読み進めていくでしょう。作品内で、主人公の会社は初めに事故を起こしてしまい、どん底から這い上がろうともがいても上手くいかず、失敗の連続、会社と家族の危機、命の危機、駄目で駄目でどうしようもなく駄目で、それでも最後は晴れ間が見え、どしゃ降りの後に架かる虹のように、美しく、そしてスカッとした解放感を与えてくれる作品だと思います。

    池井戸潤を読もう

    作家の池井戸潤さんは元銀行員という経歴を持ち、作品においても秀才肌な印象を受けますが、実は内にすごく熱いものを持っている人です。現代人がどこかに置き忘れてしまった熱い魂を、「忘れ物だよ」とでも言って届けてくれる、そんな作家さんだと思います。そういった何か熱いものを呼び覚ましたい人は、今回紹介した『空飛ぶタイヤ』を始めとした池井戸潤さんの作品を手に取ってみてはいかがでしょう。