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  • 作風を広げ続ける小池真理子の逸品ホラー
    作風を広げ続ける小池真理子の逸品ホラー

    小池真理子といえば、1995年に第114回直木賞を受賞した「恋」。これはミステリーシリーズの中で発表されたものですが、主人公の切ない心を描いた内容はタイトル通り恋愛小説と言えるでしょう。その後も多数恋愛小説を執筆していますが、ホラー作品を出していたことはご存知でしょうか?

    小池真理子作品の流れ

    小池真理子のデビュー作は「知的悪女のすすめ」というエッセイ作品でした。発表してからしばらく経った頃にマスコミに取り上げられ、売り上げが一気に伸びたそうです。でも、彼女が目指すのは小説家。“知的悪女の小池さん”としてすっかり有名になってしまったので、小説家として世に認めてもらうのに苦労したと言います。

    その後はサスペンス作品を中心に執筆していきますが、いまいち読者を掴みきれずに停滞していたそうです。その停滞期を打破しようと無我夢中で書き上げたのが「恋」でした。ただ無心で書いて、これでいつ死んでも良いと思ったほど満足できたと彼女は語っています。そして、全身全霊を傾けてできた作品で直木賞を受賞したので、その後は自由な作風で書けるようになったそうです。

    光と闇の対比で魅せる作品

    小池真理子作品で心を鷲掴みにされたのは「恋」なのですが、彼女のサスペンス作品やホラー作品も好きです。近年ではすっかりそのジャンルから遠ざかっていて残念ですね。彼女の現実と隣り合わせにある恐怖を描いた作品は傑作揃いだと思うのですが。

    彼女の数少ないホラー作品の一つが、1988年に発行された「墓地を見おろす家」です。都心の新築マンションながら緑豊かな環境、しかも格安、という好条件の物件に子どもと3人で移り住んできた夫婦の物語です。

    でも格安なのには理由がありました。それはタイトルから分かるように、墓地に挟まれた土地だったということです。始めは平和に暮らしていたものの、次第におかしな現象に悩まされるようになっていきます。その現象はよくあるホラー現象で、全く目新しいものではありません。それなのに小池真理子の語り口はじわりじわりと読者を恐怖に追いやります。この“じわりじわり”というのが日本のホラーなのかもしれません。

    日当たりの良い明るいマンションの中にある地下倉庫のじめじめとこもった空気の対比…光の部分を上手く描いたことで、より闇の部分が強調された作品だと思います。

    今後の作風の変化も楽しみ

    小池真理子は様々な作風が書ける貴重な作家です。ドラマ化や映画化された作品もありますが、やはり映像にすると細かな描写が損なわれる感があるので小説で読むことをおすすめします。でも「墓地を見おろす家」だったら映像化に向いているかもしれませんね。
    今後もどのように作風が変わっていくのか、ますます注目したい作家です。