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  • 勇気をもらえる冒険ファンタジー「ブレイブ・ストーリー」
    勇気をもらえる冒険ファンタジー「ブレイブ・ストーリー」

    「宮部みゆき」と言えば一度は名前を聞いた事がある方が多いのではないでしょうか。私が初めて読んだ宮部みゆきさんの作品は、「ブレイブ・ストーリー」です。これは2003年発売のファンタジー冒険小説で、約600ページもある分厚いハードカバーが上下巻に分かれています。それではこの作品の魅力をお話していきます。

    始まりは何気ない日常生活から

    これは「ファンタジー冒険小説」と先ほども言いましたが、最初はごく平凡な日本の家族の物語からストーリーは始まります。優しい両親に育てられた小学5年生の「三谷亘」、彼がこの物語の主人公です。彼は毎日平和に学校に行き、友人の「カッちゃん」と時々小さな冒険をしながら日々を過ごしていました。しかし、彼の知らない内にその平和な日常にも魔の手が忍び寄っていたのです。

    謎の美少年転校生の登場と突然壊れる平和な日常

    平和な日常の中、隣のクラスに「芦川美鶴」と言うミステリアスな美少年が転校してきます。亘は何かと彼と衝突を繰り返すのですが、後にその存在は大きなものとなります。私はこの「芦川美鶴」がとても気になる存在でした。平和な日常の中に現れた彼の存在は、読者を引き込むカンフル剤の役割を持っていたと思います。
    そんな少しずつ変化を見せる亘の世界に、「両親の離婚」と言う決定的な亀裂が入ります。ショックを受けた母親は自殺未遂で昏睡状態、亘はどうにか母親を助けたいと願います。そんな時に亘は美鶴から「願いを叶えたいなら『幻界』に行けば良い」と教えられます。『幻界』とは現実世界とは異なるまさにファンタジーゲームのような世界で、美鶴もある願いを叶えるために幻界を行き来していたのです。
    「現世とは異なる世界に行ける」、当時まだ子供だった私にはまさに憧れてしまうような、夢のような物語でした。また、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」も大好きだったため、通ずるものを感じたのです。

    『幻界』での戦いと願い

    「母親を助けたい」と決心した亘は、いざ『幻界』へと飛び込みます。美鶴も『幻界』にいましたが、願いを叶えるのに必要なオーブを集めるため二人は時に敵対します。『美鶴の願い』は読んでからのお楽しみと言う事で控えますが、美鶴は自分の願いを叶えるために手段を選ばず進んでいきます。一方亘は「『幻界』の人達にも平和に暮らしてほしい」と言う優しさがありました。二人は光と影のように相反する性質を持っていたのです。
    この絶対に相容れない存在が、お互いを引き立てストーリーが際立ったように思います。また、亘は本来の朗らかな性格から周りの協力者も多かったのですが、美鶴は完全に一匹狼で全てをやり遂げようとしていました。悪役のように描かれていながらも、美鶴のその「一人でやり抜く力と勇気」と言う部分に私は憧れのような気持ちを持ちました。
    また「目的のためには手段を選ばない」と、我が道を進んで行く美鶴には、「はてしない物語」のバスチアンに重なる部分もあるように感じました。しかし『美鶴の願い』を知ると、何ともやるせないその切実さに胸を打たれます。本来の主人公は亘ではありますが、美鶴自身の練り込まれた物語を読むと、彼もまた第二の主人公なのではないかと思います。

    子供にも大人にも読んでもらいたい物語

    小学生が主人公の長編ファンタジーではありますが、この物語は子供はもちろん大人にも読んでもらいたいと思うストーリーです。何故なら最後の部分がまた「宮部みゆきさんらしい」終わらせ方だからです。単なるハッピーエンドではない、だけどバッドエンドでもない、読者の心に余韻を残すような終わらせ方なのです。読み終えた時、貴方の心にはどんな「勇気」が宿っているでしょうか。