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  • 天才乙一の最高傑作「ZOO」の魅力
    天才乙一の最高傑作「ZOO」の魅力

    日本を代表する人気小説家のひとりに乙一(おついち)がいます。作品のジャンルは様々で、ホラーやグロテスクな要素が強いものは黒乙一、切なさの要素が強いものは白乙一と呼ばれています。今回は黒と白が見事に融合された乙一の最高傑作「ZOO」という短編集の中から選りすぐりの3作品をご紹介します。

    驚愕の大どんでん返し「カザリとヨーコ」

    「カザリとヨーコ」は一卵性双生児の姉妹の話です。母親は妹カザリだけ可愛がり、姉ヨーコには虐待します。ある日カザリが母親のパソコンを壊してしまい、母親の虐待を恐れヨーコの仕業に見せかけようとします。そこでヨーコは「母親はカザリの仕業だと知っているから謝った方が良い」と告げます。カザリは認めたら終わりだと思っているので謝らず、ヨーコはカザリと入れ替わって謝罪することを提案します。その後母親は当然ヨーコの仕業だと思い、ヨーコに入れ替わったカザリを殺してしまいます。
    この作品を読んでいると、ヨーコにとにかく気持ちを振り回されます。母親に愛されないヨーコに同情の気持ちを抱いていたかと思えば、ヨーコが思い付いた名案に驚かされ、生き残るために妹を犠牲にする発想には恐怖すら覚えます。最初から最後までヨーコから目が離せない作品です。

    グロテスクだけど温かみを感じる「冷たい森の白い家」

    「冷たい森の白い家」は両親を亡くし不幸な運命を辿る女の子の話です。引き取られた家でひどい扱いを受けた女の子は森に人間の死体で家を建てようと思い付き、人を殺しては死体を森に運び積み重ねていきます。ある日「死体の中に弟がいる」と言う少女が訪れ、少女は弟を家に帰して欲しいとお願いして家の一部になります。しかし女の子は帰すフリをして死体を放置します。その後少女が死ぬまで会話をし、死んだ後姉弟の死体を2人の家に届けます。
    この作品はグロテスクな表現が多いですが、主人公の女の子の感情がほとんど出てこないので作品自体は淡々としています。女の子がひどい扱いを受けていた時、最初の殺人を犯した時、死体の家を作っている時、弟の死体を放置した時、少女と会話している時、少女と弟の死体を家に届けた時。その時々の女の子の感情を想像しながら読めるのがこの作品の面白いところです。

    全ての要素が合わさった傑作「SEVENROOMS」

    「SEVENROOMS」は猟奇殺人者に監禁された姉弟の話です。弟が7つの部屋を通る排水溝に潜り部屋を行き来することで、姉は7つの部屋のサイクルと自分たちが殺される日を推測します。ついに姉弟が殺される日、姉は自分の命を犠牲にして弟を外に逃がします。
    この作品は排水溝を流れてくる物体のグロテスクさ、死が迫ってくる恐怖、弟に対する姉の愛など、様々な要素が組み合わさっています。物語の最後まで恐怖の連続ですが、その恐怖の中で生きることをあきらめない姉に読んでいる側も励まされます。自分の命を犠牲にしてまで弟を守った姉の強さにはただただ脱帽です。

    乙一の才能

    乙一の作品には血や内臓、殺人、死体などダークでグロテスクな表現が数多く出てきますが、これからどうなるのか予測できないストーリーに引き込まれてどんどん読み進めてしまいます。そして読み終えた後に残る感情はけっして「気持ちが悪い」ではありません。ダークな世界観の中にも、何とも言えない「感動」を加えられるところが天才乙一の才能と言えるのではないでしょうか。