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    本好きに紹介したい映画

    面白い本が映画化されると思わず観に行きたくなるように、面白い映画を観ると原作を読みたくなります。ただ、原作は良かったのに映画はちょっと、もしくは映画は良かったのに原作は、なんていうケースも多々あります。そこで今回は、原作本も映画も面白い作品を紹介します。

    宗教という題材を通して人間が持つ深みを描き切った映画「沈黙」

    遠藤周作の沈黙を映画化した、「沈黙」は、アカデミー賞を受賞しても不思議でないほどの出来栄えです。この映画は20世紀最高と謳われる日本人小説家、遠藤周作の小説「沈黙」を題材にオスカー監督マーティン・スコセッシが描いた作品です。彼はいつか必ず撮ろうと数十年前から温めていた作品と、インタビューで語っています。
    内容は、宗教という複雑かつ難解でアンタッチャブルな側面もある問題に対して真正面からぶつかった重厚極まりない小説を、僅か3時間で深く重みのある映像作品に描き切っています。

    「沈黙」という映画の凄さ

    日本の江戸時代には、外国から船で密かに日本へ渡り当時でいう異国からの布教を広めるキリシタンがいました。その布教を信じる信者は禁止されていたため、信者と疑われた者はキリストが描かれた踏み絵が踏めるか確認され、踏めないと処刑されてしまいます。布教を広める宣教師としては、自分達が神と信じるキリスト教を広めるほど周りに被害が広がり、心の底から苦悩します。自分の存在と宗教のせいで日本人が処刑されていきますが、どうすることもできません。どんな悲惨な事が起ころうとも手も足も出ず、ひたすら神に祈るのみです。それでも神は答えず、何も起こらず、神は静かに沈黙したままです。次第に信仰は揺らいで行きます。神は本当にいるのでしょうか。異国から来たキリシタンの心は揺れてきます。しかし絶対的であった信仰を信じる心を失うと、自分という存在が根幹から崩れ落ちてしまいます。このような心情の移り変わりと描き方が見事です。

    鎖国をして排他的であった日本の江戸時代に実際に存在したキリシタン布教に対する踏み絵という題材を使って、キリスト教のみならず、宗教という存在の浸透性、排他性、宗教の難解さ、また信じ続けることの難しさについて見事に表現しています。

    俳優陣も皆素晴らしい演技で見事に没入しています。巨匠の演出の元に素晴らしい演技合戦を繰り広げます。特に今回はハリウッド映画ですが、日本の俳優陣の演技が群を抜いていました。この点だけでも見応えがあります。

    自身もクリスチャンである監督がキリスト教の矛盾点や信仰の難しさを題材にしたからこそ表現できるリアリティー溢れる深さと話の重み、登場人物の行動がセリフから、誰もが本来持っている人間の業や矛盾を感じさせられ、熟考できて余韻に浸れる重厚な映画です。
    小説が素晴らしいからこそ、ここまでの映画作品が生まれた事は間違いありません。小説も映画も文学史・映画史に残る名作です。

    心に刻まれる映画

    心に刻まれる映画とは、決して娯楽的で単純な楽しさを追求したものではなく、厳しさや深さ、複雑さを表現した作品であったりします。その上で娯楽的要素も加わっていると、映画としての完成度が引き上げられます。今回ご紹介した「沈黙」はまさにその全てが凝縮した作品なので、噛み締めるように深い余韻に浸れる、知性・刺激・興奮・感動・余韻が混ざり合った極上の映画といえます。